世界の保育(月刊コラム) 2026年8月号
シンガポールが保育料半減へ、米国はHead Start基準見直し案
8月は、シンガポールが2030年までに保育料を現在の半分以下にする方針と、乳児保育者1,800人の追加確保を打ち出しました。米国では幼児教育プログラム「Head Start」の基準を大きく見直す規則案が公表され、オーストラリアとニュージーランドでは園の安全や監督体制に関する動きがありました。
この号は、2026年9月28日に、2026年8月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。
アジア
シンガポール保育料を2030年までに半分以下へ、乳児保育者を1,800人増員
8月23日の首相演説(ナショナル・デー・ラリー)を受け、政府は子育て支援策を発表しました。政府支援を受ける園の全日保育は月150シンガポールドル、乳児保育は月300シンガポールドル(いずれも所得に応じた補助の前)を目標とし、2028年から段階的に下げて2030年に達成するとしています。現在の半分以下の水準で、補助の詳細は2027年初めに示される予定です。
あわせて、12歳以下の子を持つ働く親の子ども看護・育児休暇(チャイルドケア・リーブ)を、子どもの数に応じて年8〜12日に整理・拡充し、その費用を政府が負担する方針も示されました。
8月28日には、社会・家族開発担当の上級国務相が保育者の日(Teachers' Day)の式典で、2030年までに乳児保育を担う保育者を1,800人追加で確保すると表明しました。幼児教育開発庁(ECDA)は9月から、資格取得中の研修生への手当を引き上げるなど採用補助金(Manpower Hiring Grant)を拡充し、2030年末まで延長します。
日本の保育士にとって保育料を下げて利用を広げるには、同時に保育者を増やす仕組みが欠かせない、という発想がはっきり表れています。特に0歳児クラスの担い手をどう育てるかは、日本の園でも共通の課題です。
北米
米国低所得家庭向け幼児教育「Head Start」の基準見直し案を公表
米国保健福祉省(HHS)の子ども家庭局(ACF)は8月6日、低所得家庭の子どもを対象とする幼児教育プログラム「Head Start」の運営基準を見直す規則案(「Reducing Federal Burden for Head Start Programs」)を発表し、8月7日に官報(Federal Register)に掲載されました。意見募集の締め切りは10月6日です。
案では、職員1人あたりの子どもの人数(配置基準)やクラスの人数上限について連邦独自の基準をやめ、各州・地域の基準に合わせて各プログラムが定める形にするとしています。HHSは、管理経費を抑えて事務負担を減らすことで受け入れ枠を増やせると説明し、食事を栄養価の高い食品中心にすることや、体を動かす活動の基本要件を設けることも盛り込みました。
官報の影響分析では、見直しで生まれる費用削減により、2031年までに就学前向けで約11万6千人分、乳幼児向け(Early Head Start)で約4万6千人分の枠が増える可能性があると見積もっています。一方で、保育関係団体からは配置基準などの扱いについて多くの論点が示されており、今後の意見募集の行方が注目されます。
日本の保育士にとって配置基準を「全国一律」で決めるか「地域ごと」に任せるかは、保育の質と受け入れ量のバランスに直結するテーマです。自分の園の配置が子どもとの関わりにどう影響しているか、振り返るきっかけになります。
オセアニア
オーストラリア「見守りやすい園舎」の全国ガイダンス、行政の訪問は3か月で6,000件超
保育の質を担う全国機関ACECQA(オーストラリア子ども教育・保育品質機関)は8月10日、園舎の設計を通じて子どもの見守りと安全を確保するための全国ガイダンスを公表しました。「園舎は常に子どもを見守れるように設計・維持されなければならない」とする規則(第115条)について、見通しのよい空間づくり、死角や孤立した場所を減らす工夫などを、写真や3D図、実例とともに示しています。新築・改修を計画する園だけでなく、今の環境を見直す園にも使える内容です。
これに先立つ8月5日、ACECQAは2026年4〜6月の3か月間に、州・準州の監督当局が6,000件以上の施設訪問を行ったと発表しました。評価・格付けのための訪問は1,000件余りで、残る5,000件以上は監視や法令順守の確認、調査のための訪問でした。現在、全体の92%の施設が国の品質基準(National Quality Standard)を満たすか上回っているとしています。
日本の保育士にとって安全は職員の注意力だけでなく、部屋のレイアウトや家具の配置でも支えられます。午睡室やトイレ・おむつ替えの場所など、自園の死角を職員みんなで点検してみるのもよさそうです。
オセアニア
ニュージーランド園の認可業務を9月から教育評価局へ移管、音韻意識の教材も公開
教育省は8月20日の幼児教育向け通信(Early Learning Bulletin)で、幼児教育施設の認可・認定などの業務を9月1日から教育評価局(ERO)が担うと案内しました。手続き中の申請などはEROに引き継がれ、園側で特に対応は不要としています。基準づくりや方針、カリキュラム、補助金は引き続き教育省が担当します。
同じ号では、遊びを中心とした保育の中で、ことばの音に気づく力(音韻意識)を育てるための保育者向けオンライン教材も紹介されました。2026年中には、マオリ語版と、サモア語・トンガ語を使う太平洋系の園向けの教材も追加される予定です。
日本の保育士にとって園の外部評価と認可を同じ機関がまとめて担う動きは、日本の指導監査や第三者評価のあり方を考える材料になります。遊びの中でことばの音を楽しむ工夫も、日々の保育にすぐ取り入れられる視点です。
各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。