世界の保育(月刊コラム) 2026年7月号
ドイツで保育の質の新法案、米イリノイ州に幼児期専門の州機関
7月は、保育の「質」と「仕組み」を整え直す動きが目立ちました。ドイツでは全国共通の質の向上をめざす法案の草案が公表され、米イリノイ州では幼児期の施策をまとめて担う州機関が発足。韓国は子どもの病気や休園のときに使える短期の育児休業を、ニュージーランドは保育の許認可業務の移管を進めています。
この号は、2026年9月28日に、2026年7月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。
ヨーロッパ
ドイツ言葉の発達支援と職員の上乗せ配置を柱にした新法の草案を公表
ドイツ連邦の教育・家族・高齢者・女性・青少年省(BMBFSFJ)は7月13日、保育(Kita)の質の向上を目的とする「KiTaスタートチャンス・質向上法(SCQEG)」の省案(Referentenentwurf)を公表しました。
草案では、4歳の時点で言葉、社会情緒、運動、数の力の発達を確認すること、言葉の支援にあたる保育者の時間として子ども1人あたり週30分を確保することが示されています。困難な状況にある家庭の子どもが多い施設(各州で少なくとも施設の10%)には、1施設あたり0.5〜1.5人分の職員を上乗せで配置し、保育内容の相談役(専門アドバイザー)も1施設あたり週80〜240分関われるようにするとしています。
連邦は2027年から2034年にかけて約92.5億ユーロを支援する計画で、実施は準備期間を取りながら段階的に進める方針です。
日本の保育士にとって「言葉の育ちを支える時間」を子ども1人あたりの分数で確保し、支援が必要な家庭の多い園ほど人を厚くするという考え方です。配置を人数だけでなく「時間」や「園の状況」で考える視点として参考になります。
北米
米国(イリノイ州)幼児期の施策を一つにまとめた「イリノイ州幼児期局」が発足
米イリノイ州で7月1日、幼児期の施策だけを専門に担う州の機関「イリノイ州幼児期局(Illinois Department of Early Childhood、IDEC)」が正式に業務を始めました。これまで児童家庭サービス局、福祉局、州教育委員会、知事室の幼児期発達担当部署に分かれていた事業を一つにまとめたものです。
IDECは、保育料補助(Child Care Assistance Program)、保育施設の認可、プリスクール(Preschool for All)、早期介入(Early Intervention)、家庭訪問、乳幼児のメンタルヘルス支援などを所管します。補助金と直接サービスの規模は43億ドルで、職員は385人(うち340人がほかの機関からの異動)です。
保育人材への投資として、「スマートスタート保育人材補助金(Smart Start Workforce Grants)」4,980万ドルを3,984の事業者に交付したことも示されました。JB・プリツカー州知事は、幼児期の事業を「一つ屋根の下」に集めることで、より強い仕組みをつくると述べています。
日本の保育士にとって保育・幼児教育・家庭支援・発達支援の窓口が一つになると、家庭にとっても現場にとってもつながりやすくなります。自分の園が地域のどの機関とつながっているかを整理してみるのもよさそうです。
アジア
韓国子どもの病気や休園のときに使える「短期の育児休業」を新設
韓国政府の政策ブリーフィングは7月1日、2026年下半期から変わる子育て・家族支援の制度をまとめて紹介しました。その一つが、8月20日から始まる短期の育児休業です。
対象は8歳以下、または小学2年生以下の子どもを育てる人で、休園・休校や長期休み、病気・けがによる入院、感染症などで子どもが登園・登校できないときに、年1回、1週間または2週間単位で取得できます。
また7月からは、全国の家族センターで、結婚を控えたカップルから乳幼児期・学童期・思春期の子どもの親まで、成長の段階に合わせた親教育を行います。ひとり親や共働き、多文化家庭向けのプログラムも用意されます。
日本の保育士にとって子どもが体調を崩したとき、保護者が休める制度があるかどうかは、保育の現場にも直結します。保護者の働き方を支える制度を知り、登園の判断や相談の場面に生かしたいところです。
オセアニア
ニュージーランド保育の許認可業務を教育評価局へ移管、保育の財政のあり方も意見募集
ニュージーランド教育省は7月23日の幼児教育向け通信(Early Learning Bulletin)で、保育施設の認可・認証にかかわる業務を教育評価局(Education Review Office、ERO)に移すと案内しました。新規開設、プレイグループの認可、変更届、運営者の変更などが対象で、10月以降の手続きはEROに直接申請することになります。
同じ号では、幼児教育(ECE)の財政のしくみについて、大臣の諮問グループ(Ministerial Advisory Group)による見直しの意見募集が8月6日まで行われていることも紹介されました。あわせて、6月22〜28日を調査期間とする年次の幼児教育センサスの提出も呼びかけています。
日本の保育士にとって許認可や評価の担い手が変わると、現場が向き合う窓口や求められる書類も変わっていきます。制度の見直しに現場の声を届ける意見募集の仕組みにも注目です。
各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。