世界の保育(月刊コラム) 2026年6月号

豪州が保育者の15%賃上げを確定、英国は抜き打ち監査を3倍に

6月は、保育者の処遇と保育の安全をめぐる大きな発表が相次ぎました。オーストラリアは保育者の賃上げ財源を確保する代わりに保育料の値上げ抑制と質の基準を条件にし、イングランドでは保育施設への予告なし訪問を大幅に増やすと発表。カナダと中国も子育て世帯を支える予算を打ち出しています。

この号は、2026年9月28日に、2026年6月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。

オセアニア

オーストラリア保育者の15%賃上げを継続、保育料の値上げ抑制と質の基準を条件に

オーストラリア政府は6月17日、保育者(幼児教育・保育の従事者)の15%賃上げを今後も確実に続けると発表し、今後2年間で36億豪ドルを充てるとしました。2024年12月と比べると、フルタイムの保育者で週255豪ドル、幼児教育の教員(Early Childhood Teacher)で週410豪ドルの上乗せになります。7月からは家庭的保育(Family Day Care)や居宅訪問型保育(In-Home Care)の従事者も対象に加わります。

この財源を受け取るには、施設は保育料の値上げを抑えることを約束しなければなりません。さらに2027年7月からは、国の質の基準(National Quality Standard)を満たすことも条件となり、満たさない場合は資金の削減や停止もあり得るとしています。

政府によると、賃上げ開始後に保育分野の従事者は約2万人(8%)増え、求人数は31%減少、配置基準の特例(人員不足による免除)で運営する施設の割合も8.9%から5.1%に下がったとのことです。

日本の保育士にとって処遇改善の財源に「保育料の抑制」と「質の基準」をセットで求める仕組みです。賃金が上がると人が集まり、配置の無理が減るという数字は、日本の処遇改善を考えるうえでも参考になります。

出典(1件)

ヨーロッパ

英国(イングランド)保育施設への予告なし訪問を3,000件増やし、見守りの体制を強化

イングランドの教育省(DfE)は6月22日、保育の安全(セーフガーディング)強化のため、年800万ポンド超を投じると発表しました。柱は、監査機関Ofsted(教育水準局)による予告なしの訪問を3,000件増やすことで、2025年4月からの前年度の件数の3倍になるとしています。

あわせて、開設前の事業者への対面面談の拡充、Ofstedのシステム更新によるリスクのリアルタイム把握と迅速な介入、職員や保護者が懸念を伝えやすくする内部通報(ホイッスルブロウ)の保護の強化が盛り込まれました。

また、保育現場でのデジタル機器や防犯カメラ(CCTV)の使い方を専門家パネルが検討すること、複数の施設を運営する保育チェーンをどう規制するかを見直すことも示されています。

日本の保育士にとって外からの監査を増やすと同時に、現場の職員が「おかしい」と声を上げやすい仕組みも重視されています。自園で気になることを相談できるルートがあるか、見直すきっかけにしたい話題です。

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北米

カナダ低料金保育を続けるため、2年間で最大54億カナダドルを追加

カナダ連邦政府は6月19日、パティ・ハイドゥ雇用・家族相(Minister of Jobs and Families)が、州・準州と進める低料金の保育制度を維持するため、2026〜27年度と2027〜28年度の2年間で最大54億カナダドルを追加すると発表しました。

2021年以降、州・準州との保育協定を通じた連邦の拠出は580億カナダドルを超え、保護者は子ども1人あたり年間最大1万1,255カナダドルを節約できているとしています。各政府は、25万人分以上の新たな保育の受け皿をつくることを目指しています。

発表では、保育料を手頃に保つことに加え、制度を支える保育者(Early Childhood Educator)を支援することも目的に挙げています。2025年には、幼い子どもがいる25〜54歳の母親の就業率(労働力率)が79.5%と、過去最高水準に近づいたことも紹介されました。

日本の保育士にとって保育料を下げて利用を広げるほど、担い手の確保が制度の要になります。「保護者の働き方」と「保育者の働き方」が一体で語られている点に注目です。

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アジア

中国乳幼児向け「育児補助金」に中央財政から999億元

中国の財政部は6月2日、乳幼児を育てる家庭に支給する「育児補助金(育儿补贴)」のため、中央財政から999億元を地方に配分したと発表しました。前年より10.6%の増加で、地方の負担分と合わせると年間でおよそ1,100億元の規模になる見込みです。

支給の審査と実施は各地の衛生健康部門が担い、原則として四半期ごとに少なくとも1回まとめて支給し、前の四半期に審査を通った申請は当該四半期末までに支給するとしています。財政部は国家衛生健康委員会と連携して資金の管理と監督を強め、「出産・子育てにやさしい社会」づくりを支えるとしています。

日本の保育士にとって現金給付という形で子育て家庭を支える政策です。保育の場でも、保護者が使える支援制度を知っておくと、日々の相談に応じるときの引き出しが増えます。

出典(2件)

各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。