世界の保育(月刊コラム) 2026年5月号

英国が保育の「隠れ費用」に対策/ノルウェーは無償化の試算を公表

5月は「保育にかかるお金」をめぐる動きが各国で目立ちました。イングランドでは無償保育の追加料金への対策が打ち出され、ノルウェーでは保育の完全無償化についての報告書が大臣に提出されました。オーストラリアでは賃上げ支援の対象外となった家庭訪問型保育の苦境が報じられ、米国では連邦の保育・幼児教育制度の見直し案がまとめて発表されました。

この号は、2026年9月28日に、2026年5月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。

オセアニア

オーストラリア15%賃上げ支援の対象外に——家庭訪問型保育の事業者が存続の危機を訴え

オーストラリアの公共放送ABCは5月8日、子どもの自宅で保育を行う「インホーム・ケア(家庭訪問型保育)」が厳しい状況にあると報じました。この保育は、遠隔地に住む家庭や交代勤務の保護者、重い病気の子どもなど、施設型保育を利用しにくい家庭を支えています。

連邦政府は2年前、保育者の15%賃上げの費用をまかなう「就労継続支援金(ワーカー・リテンション・ペイメント)」を打ち出しましたが、対象は施設型保育で、インホーム・ケアの事業者は含まれていません。業界団体が残る23事業者を調べたところ、31%が閉鎖の危機にあると答え、保育者の勤務時間が減ったり離職したりしたとの回答は77%にのぼりました。

業界団体は、支援を広げるのに必要な額は年630万豪ドルほどだと訴えています。ジェス・ウォルシュ幼児教育相は、約800の家庭にとってこの保育が重要だと認めたうえで、担い手をどう支えるか業界と協議を続けるとしています。

日本の保育士にとって処遇改善の仕組みが「どの保育形態まで届くか」で、現場の人材確保が大きく変わることがわかる事例です。日本でも、家庭的保育や居宅訪問型保育、病児保育などで働く人の処遇がどう扱われているか、目を向けてみるとよいかもしれません。

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北米

米国連邦の保育制度を見直すパッケージを発表、ヘッドスタートの賃金・福利厚生要件の撤廃を提案

米国保健福祉省の子ども家庭局(ACF)は5月11日、保育に関する4つの施策をまとめて発表しました。低所得家庭の保育を支える「保育・発達基金(CCDF)」では、州に対して事業者との契約・補助金方式より保護者が選ぶバウチャー(利用券)方式を優先するよう促していた2024年の規則を撤回する最終規則を出しました。

また、宗教系の事業者や、家族・友人・近所の人による保育も連邦の支援を受ける保育でより大きな役割を担えると明確にしました。低所得家庭向けの就学前教育プログラム「ヘッドスタート」については、職員の賃金や福利厚生に関する要件などを取り除く規則改正案を示し、事業者の負担を減らして受け入れ枠を広げることが目的だとしています。

日本の保育士にとって保育者の賃金を「制度の基準」として定めるか、事業者の裁量に任せるかは、各国で考え方が分かれるテーマです。日本の公定価格や処遇改善加算が自分の給与とどうつながっているかを知っておくと、ニュースの見え方が変わります。

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ヨーロッパ

ノルウェー保育園(バーネハーゲ)完全無償化の報告書が提出——費用は年約24億クローネ

ノルウェーの教育・研究省は5月13日、すべての子どもの保育園(バーネハーゲ)を無償にする場合の方法を検討した作業部会の最終報告書を、カリ・ネッサ・ノルトゥン教育相が受け取ったと発表しました。報告書の題は「全体から見れば小さく、身近なところでは大きい——すべての子どもに無償の保育園を(Lite i det store, stort i det små. Gratis barnehage for alle barn)」です。

報告書によると、完全無償化には年に約24億クローネが必要です。ノルウェー統計局の分析では、学びへの効果や保護者の就労増加だけでは費用と保育料収入の減少を補えず、社会全体でみた経済的な効果はマイナスと評価されました。一方で作業部会は、質の高い保育に通うことの良い効果は、数字で測りにくい形で存在しうるとも指摘しています。

政府はこれまでに保育料の引き下げに76億クローネを充て、2026年には職員配置を手厚くするための補助を8億クローネに増やしたとしています。

日本の保育士にとって無償化の効果を「お金」だけで測ると見えにくいものがある、という指摘は興味深い点です。日々の保育が子どもや家庭にもたらしている変化を、記録や言葉で伝えていくことの大切さを改めて考えさせられます。

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ヨーロッパ

英国(イングランド)無償保育の「隠れ費用」に対策——教育相が競争・市場庁に調査を要請

英国教育省は5月26日、無償保育(公費で賄われる保育時間)を利用する家庭に求められる追加料金への対策を発表しました。保護者の中には、入園時の前払い保証金や強制的なオプション料金、追加の時間分の支払いを求められたという声が多く、72%が追加料金の支払いに貯金を充てていると答えています。

ブリジット・フィリップソン教育相は、独立機関の競争・市場庁(CMA)に書簡を送り、保育市場について調べるよう求めました。あわせて、近くの無償保育を探したり費用の見通しを立てたりできる無料のデジタルツールを、ブリストルなど3地域で先行して公開しています。

政府によると、無償保育を利用する家庭は50万世帯を超え、対象の家庭は子ども1人あたり年平均8,000ポンドを節約しています。

日本の保育士にとって「無償」でも、実際には追加の負担が保護者にかかっていないか——という視点は、日本の保育料無償化後の実費徴収や上乗せ徴収を考えるうえでも参考になります。保護者に費用をわかりやすく説明することも、信頼関係づくりの一つです。

出典(1件)

各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。