世界の保育(月刊コラム) 2026年3月号

シンガポールが保育料補助を拡大/スコットランドは保育者の賃金を底上げ

3月は、保育を「使いやすく」するとともに「支える人」を大切にする動きが続きました。シンガポールは保育料補助の対象を中所得層にも広げる方針と保育者の増員計画を示し、スコットランドは無償保育を担う保育者に生活賃金を保障するため、自治体の支払単価の引き上げを求めました。ニュージーランドでは、保育施設の認可基準を簡素化する準備が進んでいます。

この号は、2026年9月28日に、2026年3月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。

アジア

シンガポール保育料補助の所得上限を引き上げ、2030年までに保育者3,500人を確保へ

シンガポール国会の予算審議(Committee of Supply)で、社会・家族開発省のゴー・ペイミン担当国務相は、就学前施設の保育料補助を広げる方針を説明しました。2027年1月から、追加補助(Additional Subsidy)と幼稚園の保育料補助(KiFAS)を受けられる世帯の月収の上限を1万5,000シンガポールドルに引き上げ、6万以上の低・中所得世帯が恩恵を受けるとしています。

例として、世帯月収1万2,500ドルで2人の子どもを政府の拠点事業者(アンカー・オペレーター)の保育所に預ける家庭では、保育料の負担が2026年の730ドルから2027年には470ドルへと35%下がると示されました。全日保育の保育料の上限は、アンカー・オペレーターで610ドル、パートナー・オペレーターで650ドルとなっています。

定員は過去10年で全日制が約13万5,000人分から22万人分以上に増え、2029年までにアンカー・オペレーターの定員をさらに4万人分以上増やす計画です。保育者については2030年までに3,500人を新たに採用するとし、ノンコンタクトタイム(子どもと直接関わらずに準備や記録をする時間)を含む勤務条件の見直しや、仕事の進め方を見直すジョブ・リデザインに取り組んでいることも説明されました。

日本の保育士にとって保育料の負担軽減と、保育者の確保や「子どもから離れて準備する時間」の確保を、同じ場で議論しているのが特徴です。日本でもノンコンタクトタイムは処遇改善の大事な論点。自園での時間の使い方を見直すヒントになります。

出典(2件)

オセアニア

ニュージーランド保育施設の認可基準を簡素化へ、規制を担う新たな責任者のポストも

ニュージーランド教育省は3月19日の保育施設向けの通信で、4月20日から適用される新しい認可基準(ライセンシング・クライテリア)のポイントを紹介しました。教員や施設の事務の負担を減らすための簡素化で、たとえば応急手当の備品は、決められたひな形ではなく施設ごとの必要に応じたリストを作れるようになります。一方、重い家具がしっかり固定されているかを日々の危険箇所の点検に組み込むことが求められ、そのためのひな形も用意されました。

自己評価(セルフレビュー)の義務はなくなりますが、各施設は引き続き、国の指針に照らして自分たちのカリキュラムを評価する必要があります。子どもの保護や届け出の手続きは、大きくは変わりません。

3月5日の通信では、施設の認可や基準を守っているかの監視、調査や訴追などを担う「規制責任者(Director of Regulation)」のポストが教育省内に設けられたことも伝えられました。政府は、この役職を含む乳幼児教育の規制の機能を、2026年中に教育評価局(ERO)へ移す方針を示しています。

日本の保育士にとって書類の形式よりも、実際の安全点検や保育の振り返りを重視する方向への見直しです。日本の園でも、「決まりだから」続けている記録や点検が、子どもの安全や保育の質に本当に役立っているかを見直してみる価値がありそうです。

出典(2件)

ヨーロッパ

英国(スコットランド)無償保育を担う保育者に時給13.45ポンド以上を、自治体の支払単価を5.2%以上引き上げ

スコットランド政府は3月16日、自治体が民間・非営利の保育事業者に支払う、公費による無償保育の単価について、2026〜27年度の指針を公表しました。事業者のもとで無償保育を担う保育者に、2026年4月から「リアル・リビング・ウェイジ(生活に必要な水準として算定される賃金)」の時給13.45ポンド以上を支払えるようにすることが目的です。

政府はこのために自治体へ1,100万ポンドを追加で配分するほか、地方財政全体にも2,000万ポンドを上乗せします。自治体は2025〜26年度の単価を最低5.2%引き上げて事業者に支払うこととされ、家庭的保育者(チャイルドマインダー)への単価にも適用されます。この率は、事業者の費用の平均77%を人件費が占めるという試算をもとに計算されています。

これに先立つ3月12日には、2026〜2031年の子どもの貧困対策計画が公表されました。低所得の保護者向けの保育支援の拡充などに使う6,150万ポンドの基金や、1歳未満の子どもがいる家庭へのスコットランド子ども手当を週40ポンドに引き上げる方針(2027〜28年度中)が盛り込まれています。

日本の保育士にとって公費で保育を提供する以上、その担い手の賃金水準まで単価に織り込む、という考え方です。日本の公定価格や処遇改善の加算が、実際に自分の給与にどう反映されているかを確かめる視点にもつながります。

出典(2件)

各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。