世界の保育(月刊コラム) 2026年2月号
豪州で保育者の全国登録制度が始動/英国は保育者の学位取得を支援
2月は、保育を担う「人」に焦点を当てた動きが目立ちました。オーストラリアでは保育従事者を全国で登録する制度と安全研修の義務化が動き出し、イングランドでは働きながら学位レベルの資格を取る見習い制度に雇用主向けの補助が設けられました。カナダでは保育の現状を詳しくまとめた報告書が公表され、アイルランドでは今後の保育のあり方について広く意見募集が始まっています。
この号は、2026年9月28日に、2026年2月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。
オセアニア
オーストラリア保育従事者の全国登録制度が始動、子どもの安全研修も全職員に義務化
オーストラリアのクレア教育相は2月27日、乳幼児教育・保育(ECEC)の安全対策の進み具合を発表しました。柱となるのが、保育施設で働く人の情報を国全体で管理する「全国乳幼児期従事者登録(National Early Childhood Worker Register)」の運用開始です。子どもと関わる仕事に必要な資格確認(Working with Children Check)や保有資格などを登録し、職員が施設や州をまたいで移っても把握できるようにします。政府は4,500万豪ドルを投じて開発し、1,000以上の施設で試行したうえで導入しました。
事業者は4週間以内に職員情報を登録し、採用や退職などの変更は14日以内に反映する必要があります。あわせて、虐待に気づき、止め、通報するための「子どもの安全研修」が義務化され、在職者は6か月以内、新しく採用された人は14日以内に受講しなければなりません。発表時点で10万人以上が研修に登録しており、登録や研修の実施を怠った事業者には最大3万4,200豪ドルの罰金が科されます。
これらは2億2,600万豪ドル規模の安全改革の一部で、防犯カメラ(CCTV)の全国的な試行や、施設内での私物端末の持ち込み禁止、抜き打ち検査の拡大なども含まれています。これに先立つ2月20日の連邦・州の教育相会合でも、安全研修の義務化や登録制度の導入などが予定どおり進んでいることが確認されました。
日本の保育士にとって職員の資格や研修歴を国がまとめて把握する仕組みは、子どもを守る責任を職員一人ひとりではなく制度全体で支えようとする発想です。自園の安全研修の受け方や、気になる出来事を共有する仕組みを見直すきっかけにできそうです。
ヨーロッパ
英国(イングランド)働きながら「幼児教育教員」の学位を取る見習い制度に、雇用主向けの補助
イングランドの教育省は2月13日、保育施設の職員が働きながら学位レベルの資格を取れる「幼児教育教員(Early Years Teacher)学位見習い制度」を後押しする新しい補助を発表しました。総額は320万ポンドで、全国の保育職員400人の資格取得を支えます。
見習い1人につき、研修費用として年9,000ポンドが制度から支払われます。さらに政府が1人あたり8,000ポンドを上乗せし、職員が研修に出ている間の代わりの人員や研修、社会保険料(国民保険)の費用を補って、事業者が持ち出しにならないようにします。
資格を取った職員は、保育を補助するだけでなく学びを主導する立場となり、より高い職員配置基準のもとで働いたり、給与の高い上位の役職に進んだりできるとされています。今回の措置は政府の「ベスト・スタート・イン・ライフ(Best Start in Life)」戦略の一部で、将来的にはすべての保育施設に幼児教育教員を置くことを目指しています。
日本の保育士にとって「現場を離れずに学び、キャリアと給与を上げる」道を、研修中の代わりの人員の費用まで含めて支える設計です。日本でも研修に出るときの代替保育士の確保は悩みどころ。キャリアアップ研修の受け方を園で話し合う材料になりそうです。
北米
カナダ全国の保育の現状をまとめた報告書、乳児の受け皿の少なさと人材施策の広がりを記録
2月4日、カナダの研究機関「チャイルドケア・リソース・アンド・リサーチ・ユニット(CRRU)」は、全国の乳幼児教育・保育の実態をまとめた報告書『カナダの乳幼児教育・保育 2024/2025』(第15版、464ページ)を公表しました。各州・準州の定員や利用状況、運営主体、財源、保護者の負担、保育者の労働条件などを、2024年3月末と2025年3月末の時点で比べています。連邦政府と各州が進める全国的な保育制度(CWELCC、いわゆる「1日10ドル保育」)の州ごとの実施状況も詳しく記録しています。
報告書によると、すべての州・準州で保護者の保育料は大きく下がりました。一方で、施設の定員のうち乳児の枠は全国で6%にとどまっています。また、政策上は非営利の施設を優先して増やすことになっているものの、7つの州・準州では全日保育の定員の純増の4割超を営利事業者が占めていました。
保育者については、8つの州・準州が賃金表(ウェイジ・グリッド)を導入し、6つが福利厚生の費用を負担し、10が資格認定の仕組みを設けています。ただし、これらの施策の効果を示すデータはまだ得られていないとしています。
日本の保育士にとって保育料が下がると利用希望が増え、手のかかる乳児の受け皿と保育者の確保が追いつかない――カナダの状況は、日本の0〜1歳児保育の課題とも重なります。賃金表のように処遇を「見える化」する仕組みがどう広がるかにも注目です。
ヨーロッパ
アイルランド乳幼児期の教育・保育について国民から意見募集、家庭的保育者への補助金も
アイルランドの子ども・障害・平等省は2月4日、「教育に関する国民的対話」の一環として、誕生から小学校入学までの教育・保育と学童保育をテーマにした意見募集を始めました。保護者や保育者、家庭的保育者、事業者などを対象とした12問のオンライン調査で、何を変え何を残すべきか、どうすれば赤ちゃんや子どもにとってよりよい場になるかを尋ねています。募集は3月12日までで、各地での意見交換会や6月の全国フォーラムも予定されています。
寄せられた意見は、同国の乳幼児期の行動計画『未来をかたちづくる(Shaping the Future)』の第2段階づくりに生かされます。
また、フォーリー子ども・障害・平等相は2026年の「チャイルドマインディング(家庭的保育)開発補助金」を発表しました。自宅で子どもを預かる保育者に最大1,000ユーロを支給するもので、おもちゃや設備、安全用品、研修に使う機器などに充てられます。登録済みの人に加え、これから登録する人や2026年中に開業を予定している人も対象で、申請は2月11日から4月15日まで受け付けられます。
日本の保育士にとって制度の次の段階を決める前に、保育者や保護者に広く意見を聞く手順が組まれています。日々の保育で感じている「変えたいこと・守りたいこと」を言葉にしておくことは、日本でも園や自治体に現場の声を届ける第一歩になります。
各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。