世界の保育(月刊コラム) 2025年11月号

NZで保育の規制改革法が成立/スコットランドが子どもの権利計画

2025年11月は、保育の「ルールの作り方」と「子どもの権利」をめぐる動きが続きました。ニュージーランドでは保育施設の監督を担う独立した規制担当官を置く法律が成立し、スコットランドは国連子どもの権利条約を国内法に取り込んだ法律に基づく初の計画を公表しました。フランスでは新しい出産休暇の創設が下院で可決され、ユニセフは世界の子どもの貧困に関する報告書を発表しました。

この号は、2026年9月28日に、2025年11月の各国の発表・報道をふり返ってまとめたバックナンバーです。内容はその時点の情報です。

オセアニア

ニュージーランド保育の監督を担う「規制担当官」を新設する法律が成立

ニュージーランドで、幼児教育・保育の規制の仕組みを見直す「教育・訓練(幼児教育改革)改正法(Education and Training (Early Childhood Education Reform) Amendment Act 2025)」が11月26日に国王の裁可を受けて成立しました。施行は2026年2月23日です。

この法律では、保育施設や認可プレイグループの認可・指導・苦情調査などを担う「規制担当官(Director of Regulation)」を新たに置きます。担当官は認可や処分の判断を独立して行うこととされ、大臣はこれらの個別判断に指示できません。

違反があった場合に、記録・警告・改善計画の提出要求など段階的な対応をとれるようにする規定や、調査や処分の内容を公表できる規定も設けられました。また、幼児教育制度の目的として、最低基準を定めて規制することに加え、保護者の就労を支えることが明記されました。

日本の保育士にとって監督する側の役割や、違反があったときの対応の段階が法律で明確にされました。自分の園が受ける指導監査が何を見ていて、どんな流れで進むのかを知っておくと、日々の記録や改善にも見通しが持てます。

出典(1件)

ヨーロッパ

英国(スコットランド)子どもの権利条約を取り込んだ法律に基づき、初の「子どもの権利計画」を公表

スコットランド政府は、世界子どもの日にあたる11月20日、初の「子どもの権利計画(Children's Rights Scheme)」を公表し、スコットランド議会に提出しました。2024年7月に施行された「国連子どもの権利条約(編入)(スコットランド)法」が、政府にこの計画の作成を義務づけています。

計画は、政府が子どもの権利を守り実現するためにどのような体制をとるか、どのような間隔で報告と見直しを行うかを示したものです。公的機関に子どもの権利への説明責任を根づかせることを目指し、「権利を組み込む」「子どもが力をもつ」「参加」「説明責任」「平等と差別の禁止」の5つを原則に掲げています。

計画の本文とあわせて、子ども向けにわかりやすく書き直した版も公表されました。担当の子ども・若者担当大臣は、スコットランドを「子どもが育つのに世界で最も良い場所にする」との目標を示しています。

日本の保育士にとって子ども自身が読める版を別に用意している点は、子どもを「説明を受ける当事者」として扱う姿勢の表れです。保育の中で、子どもに関わる決まりごとを子どもにどう伝えているか、振り返るきっかけになります。

出典(3件)

ヨーロッパ

フランス父母それぞれが取れる「追加の出産休暇」創設、下院で可決

フランス国民議会(下院)は11月12日、2026年の社会保障財政法案の審議の中で、「追加の出産休暇(congé supplémentaire de naissance)」の創設を可決しました。既存の休暇とは別に、父母それぞれが取れる新しい休暇です。

全国家族協会連合(Unaf)の解説によると、下院で可決された内容では、休暇は親1人あたり1か月単位で2回まで取得でき、少なくとも1か月はもう一方の親と重ならない時期に取ることとされました。施行時期は、政府案の2027年7月から2026年1月1日に前倒しする修正が可決されています。

政府は分割取得や施行の前倒しに反対していましたが、議員提出の修正案が採択されました。法案はこの後も議会での審議が続く段階です。

日本の保育士にとって父母が「別々の時期に」休むことを求める設計は、家庭の中で育児を分け合うことを後押しするものです。保護者と話すとき、父親・母親の両方が子育ての当事者であることを意識した声かけを考えるヒントになります。

出典(1件)

北米

カナダ連邦予算、「1日10ドル保育」の維持を掲げるも新たな拡充策はなし

カナダ政府は11月4日、2025年度予算「カナダ・ストロング(Canada Strong)」を発表しました。予算書では、「1日10ドル保育($10-a-day Child Care)」を、多くの国民が頼る守るべき社会プログラムの一つとして挙げています。

予算書は、2025〜26年度に約90万人がこの保育制度の恩恵を受けると示しました。保育について、新たな予算額や制度変更の具体的な記述は見られません。

保育関係の団体ビルディング・ブロックス・フォー・チャイルドケア(Building Blocks for Child Care)は11月19日の分析で、予算は1日10ドル保育を支える連邦からの年約80億ドル規模の移転を5年間維持するものだと整理したうえで、定員の拡大や保育者の賃金改善といった公約は盛り込まれず、定員不足が続く中で現状維持にとどまっていると指摘しました。

日本の保育士にとって保育料を下げて利用者が増えると、次に足りなくなるのは定員と保育者です。無償化・負担軽減が進む日本でも、「誰が保育を担うのか」という視点から処遇の議論を見ていくことが大切です。

出典(3件)

国際機関

ユニセフ(国連児童基金)『世界子供白書2025』、子どもの貧困削減の停滞に警鐘

ユニセフは11月20日、『世界子供白書2025:子どもの貧困を終わらせる(The State of the World's Children 2025: Ending child poverty)』を発表しました。130以上の低・中所得国のデータを分析し、約4億1,700万人の子どもが栄養や衛生など生活に欠かせない分野のうち少なくとも2つで深刻な欠乏状態にあるとしています。

1つ以上の分野で深刻な欠乏を抱える子どもの割合は、2013年の51%から2023年には41%に下がったものの、紛争や気候危機、開発援助の削減によって改善が止まりつつあると指摘しました。高所得国37か国でも、約5,000万人(23%)の子どもが相対的な所得の貧困にあるとされています。

報告書は各国政府に対し、子どもの貧困削減を国の優先課題とすること、現金給付を含む社会保障の拡充、教育・保健などの公共サービスの充実、保護者や養育者の「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の推進などを求めました。

日本の保育士にとって高所得国でも約4人に1人の子どもが相対的な貧困にあるという数字は、日々の保育で出会う子どもたちとも無関係ではありません。家庭の困りごとに気づき、必要な支援につなぐ保育者の役割をあらためて考えるきっかけになります。

出典(2件)

各国の政府・公的機関・国際機関・主要な報道の発表をもとに、保育士求人アースが日本語でまとめています。金額や制度はその時点のものです。